あづまいなづま

(2013/11/2 発行)
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00
あづまいなづま
01
 無無明海道のはじまりは薄暗い洞窟だ。
 人間に似た大きな頭がニタニタ
硬い岩肌を動かしているのは不気味である。
 イナヅマは河馬の妖怪のくせに
ここに住みたいと言い出した。

 私はというと
べにあずま色の服がコケ色になって少し落ち込んだ。
03
 洞窟を抜けると林であった。
 まだお昼だというのに暗闇がうごめいている。
 木々の影から不思議な生き物が染み出してきたが
風にゆらゆら身を任せてこちらをじろじろとみるだけだった。

 おびえたイナヅマが私の服を引っ張りすぎて
右側だけ異様に伸びてしまった。
04
 イナヅマが背中のかごの中で小さくなって寝ている。
 勝手に付いてきているのにのん気なやつだなあと思う。
 揺らさないように気をつけよう。
05
 霧がひどく湖の前で立ち往生。
 生き物たちが
身を寄せ合っているところを
発見したのでお供することにした。

 イナヅマは大分元気を取り戻し
隣の発光する子熊に夢中だ。
 子どもは光るが親は光らないらしい。
06
 湖の水が波となって襲ってきた。
 走っても走っても追いかけてくる。
 そのさまはまるで大蛇だ。

 イナヅマは長距離走は向かないらしいが
ここは頑張ってほしい。
 この先を抜ければ無無明海道は終わる。
07
 イナヅマから
生乾きのにおいがする。
 日向ぼっこをしてやりたいが
天気は一向に悪い。

 とぼとぼ歩くと雲に覆われた村がでてきた。
 2人の男女の話によると
ヤシロに住む鬼の力で無無明海道は天気がよくならず
悪い生き物も増えてきたらしい。
 村人たちは疲労している。
08
 鬼のヤシロに入ると霧があたりを包み込んだ。
 鬼は私の心の隙間に入ろうと
 部屋のシミから染み出してきて
 ぐるぐると雲へ変化する。

 雲が私に触れようとしたとき
イナヅマが「でっかい雲だあ!」と飛び出してきた。
それとともに稲妻がヤシロを貫き
イナヅマはただただ嬉しそうに踊った。
09
ヤシロは稲妻に打たれてぼろぼろになった。
逃げようとする鬼を捕まえて、なぜ太陽を隠すのかと聞いた。

鬼は影があるところに光があって、暗闇には力が宿るからだと言った。
今時の鬼は素直なものだ。

イナヅマは消えた雲を探しながら
稲妻の光がまさしくそれだと鼻息を荒くした。

イナヅマはどうでも良いが
鬼は泣いて反省をしているし
経でぐるぐる巻きにして少し懲らしめてやることにする。
10
 無無明海道を出た。
 ここに残ってもいいんじゃないかとイナヅマを諭したが
まだしばらくは私の背中にいるらしい。
 私の背中から良い芋の香りがするからだそうだ。

 旅は道連れ。明日は天気がよくなることを願う。


(2013年11月24日)

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